解雇予告手当とは
2018.02.05
労働管理
株式会社ソビア
「従業員を解雇したいんですが、会社側としてやっておくべきことはありますか」「退職した職員が解雇予告手当を請求してきたんですが払わないといけませんか」といったご相談をときどきお受けすることがあります。
解雇とは会社が従業員を辞めさせることを言いますが、仕事を失うということは社会人として生活に大きな影響を及ぼす重大な出来事です。そのため、従業員を解雇するにあたって、会社には労働基準法上講じなければならない手続きが定められています。
今回はその一つである解雇予告手当についてお話させていただきます。
〈解雇予告・解雇予告手当〉
大前提として、やむを得ず従業員を解雇する際は、客観的・合理的な理由が必要です(解雇の有効性等についてはBlog「解雇」を参照ください)。また、突然の解雇は従業員の生活に大きな影響を及ぼすことから、従業員の生活の困窮を緩和させるため、会社は以下2点のいずれかの手続きをとることが義務づけられています。
1. 30日以上前に解雇の予告をすること
30日という期間は従業員が次の仕事を探すために必要な期間とされています。
具体的には5月31日付で従業員を解雇する場合、5月1日以前に解雇の予告をすることが必要になります。ちなみに解雇予告当日はこの30日間に参入しません。
2. 解雇の予告を行わない場合(即日解雇)は、解雇通告と同時に30日分以上の解雇予告手当を支払うこと
30日間という期間が設けられないのであれば、会社は解雇通告と同時に解雇予告手当を支払う必要があります。解雇予告日数は、1日について平均賃金を支払った分日数分だけ短縮することができますので、即日解雇を実施したい場合は結果的に30日分を支払うことが必要になります。具体的な計算方法については後ほどご説明致します。
〈解雇予告手当の計算方法〉
解雇予告手当の支払いが確定すると、次に問題になるのが、解雇予告手当1日分の算出です。1日分の金額は平均賃金という方法で計算します。
月給者の場合は〈A:直前3カ月(賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から)に支払われた賃金総額÷3カ月間の総日数〉で求めます。但し、日給・時間給・出来高払制の場合は〈B:直前3ヶ月に支払われた賃金総額÷その期間中に働いた実日数×60%〉を下回ってはならず〈A〉と〈B〉を比較して高いほうが平均賃金とされます。
では、実際に以下のケースを想定して計算してみましょう。
・6月10日で解雇ということを5月31日に告げる予定です。つまり、10日前の予告なので20日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
・給与の締め支払い日は末日締めの翌月15日払いです。
・月給者で直近3か月間の総支給額は賃金台帳では下記のようになっています。
2/1~2/28(3/15支給)=230,000円
3/1~3/31(4/15支給)=250,000円
4/1~4/30(5/15支給)=270,000円
3か月間の総日数は89日、3ヶ月間の賃金総額が750,000円となります。
平均賃金は750,000円÷89日≒8,426円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上の端数は切り上げ)
解雇予告手当は8,426円×20日分=168,520円と計算することができます。
〈解雇予告手当を支払わなくても良い場合〉
とはいえ、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いをしなくても良いケースが3つあります。
1. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業継続が不可能となったとき
例えば、震災に伴う事業場の倒壊、類焼等により事業継続できない場合を指します。この事業継続ができないというのは事業主の故意または重大な過失は除かれており、単なる資金難による倒産などは含まれておりません。事業主の責に依らないどうしようもない事態ということがポイントになります。
2. 労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合で事前に労基署の認定(解雇予告除外認定)を受けた場合
労働者が会社に大きな損害を与えたような場合です。事業場内での窃盗や横領、傷害事件、博打、風紀の乱れ等が挙げられます。
3. 対象従業員が次のいずれかに該当する場合
下記、①~④に該当する場合は解雇予告手当の支払いは必要在りません。
①日雇いの労働者
②2か月以内の期間の有期契約
③4か月以内の期間の季節的労働者
④14日以内の試用期間中の者
つまり、解雇予告手当を支払わないといけないのかどうかは、労働条件、解雇の状況、正当性をもって慎重に判断する必要があるということが言えます。
〈解雇予告手当を支払わない場合〉
もし、会社が解雇予告手当を支払わないとどうなるでしょう。
解雇予告手当を支払わず実際に即時解雇をした場合、裁判所は解雇予告手当の支払いに加えてそれと同額の付加金の支払を命じることができます。これは裁判所の裁量で2倍の金額を請求されてしまうことがあるということです。
但し、付加金の支払いはあくまで裁判での判決が確定することが前提なので、任意の交渉等で請求されても応じる必要は在りません。また、判決が確定する前に会社が解雇予告手当相当額を支払ってしまえば違反状態は解消されるので付加金の支払は命じられません。
一方で、即時解雇の意図で解雇通告をしたものの結果的に従業員をそのまま雇用し続けた場合、解雇予告日から30日が経過した時点で解雇の効力が有効になったと判断されます。これは結果的に30日間の予告期間が経過したと言えるためです。
〈まとめ〉
解雇予告手当を支払いさえすれば解雇は有効だと誤解している方が時々いらっしゃいます。解雇予告手当を支払っても、解雇権濫用に当たればそもそも解雇は無効です。解雇の有効性と解雇予告手当の支払いは関係在りません。
重要なことは、まずその解雇が有効なものなのかどうかを慎重に判断することです。解雇は口頭でも成立してしまいますので、どんな場面であっても、感情的に「直ぐ辞めなさい」「明日から来なくていい」等と言ってしまわないようにしていただきたいと思います。
次に、どうしてもやむをえず解雇する場合、必要な手続きや付帯情報を知っておくことです。図らずも退職した従業員から解雇予告手当の請求書類を受け取った場合でも、本当に支払いの必要なものなのか、金額は正当なものなのか等の検証は必ず実施されてください。もっといえば必要な措置を講じなかったことによって、裁判所から2倍返しを命じられるような事態は会社として避けたいものです。
このようなことがないよう私たちも日々お客様と関わらせていただいておりますが、やむを得ずこういったことが起きた際は、まずご相談頂ければ幸いです。
株式会社ソビア ホワイト企業認定サービスの運営を中心に採用メディアの展開、人事コンサルティングを強みとした事業を展開。 「お客様の夢中をうみだす」ことを理念とし、多くの大手企業のご支援とコンサルティング実施の実績を持つ。